三賢社

— 連載ブログ —

Buatsui Soup | コリン・ジョイスのブログ

クロスグリがくれたもの

2017.07.04

六月から七月にかけて、庭のクロスグリの茂みに実がつく。

どんどん熟してしまうから、日に3度も庭に出て実を摘む。ぼくはこれまでずっと、クロスグリを食べにくる鳥を競争相手と見なしてきた。横取りされてなるものかと、あれこれ策を講じ……徒労に終わった。

けれど今年は、去年に収穫した実がまだ冷凍庫に少し残っていることに気がついて、どうせぜんぶは食べきれないのだから、鳥にもわけてやればいいと肚を決めた。そもそも実がなるのは、鳥を引き寄せるためなのだから。

鳥と争わなくなったおかげで、心の平穏だけではなく得るものがあった。収穫量が増えたような気がするのだ。いまにして思えば、去年までは鳥に先んじようと、熟しきらないうちにたくさん摘み取っていた。気がつくと今年は、丸々とした汁気たっぷりの実がたくさんとれている。天候の影響なのかもしれない。だが、ほんの数日長く枝に実ったままにしておくことで、もっと熟れてもっと大きく育つとするなら、鳥にとられるぶんだけおいしい実をもらえているとも言える。

それより何より、ぼくは庭を訪れる者たちに愛情をいだくようになった。食事のひとときを心地よく過ごしてもらうために、飲み水を置いたりもしている。ぼくのお気に入りのクロウタドリが、何羽か常連になってくれたのがうれしい。庭に住みついたも同然の、雄の幼鳥もいる。幼鳥は丸っこい体つきで、こう言ってはなんだが、どこか"アホっぽい"。ここに添えた写真から、ぼくの言いたいことがわかるだろう。愛さずにはいられない風貌じゃないか。

雌の幼鳥もやってくるけれど、庭の囲いにとまったまま実を食べるだけで、庭には下りてこない(雌は雄のような漆黒ではない)。雄の成鳥はふと現れて、慣れたようすで実をついばんでは去っていく(成鳥は羽が"しゅっと"して細身)。

きょうは、しあわせな気持ちになるできごとがあった。茂みの根もとに、まぬけづらの赤ちゃんクロウタドリが、1羽ばかりか2羽も。いっぱい食べるんだよ!

連載
コリン・ジョイス Colin Joyce
コリン・ジョイス
Colin Joyce

1970年、ロンドン東部のロムフォード生まれ。オックスフォード大学で古代史と近代史を専攻。92年来日し、高校の英語教師、『ニューズウィーク日本版』記者、英紙『デイリーテレグラフ』東京特派員を経て、フリージャーナリストに。07年に渡米し、10年帰国。著書に『「ニッポン社会」入門』、『「アメリカ社会」入門』、『「イギリス社会」入門』、『驚きの英国史』など。最新刊は、『新「ニッポン社会」入門〜英国人、日本で再び発見する』(小社刊)。