三賢社

— Web連載 —

(日本語) マクブ

シロクラベラ スズキ目ベラ科
琉球列島の奄美大島以南、台湾、中国沿岸、オーストラリア、西太平洋の熱帯域の浅いサンゴ礁域に生息する。

高級魚度
★★
条件が揃えば高級魚
★★高級魚
★★★超高級魚
高級魚の達人度
☆☆☆
高級魚の凡人
☆☆ほぼ達人
☆☆☆高級魚の達人
(日本語) マクブ

なぜ「本」がつくのか? ホンモロコは、本来は琵琶湖固有種で古くから高級魚だが、同じ琵琶湖と琵琶湖周辺に、たくさんの似たような魚がいて、あえて言うと瓜二つで普通の人には見わけがつかないタモロコがいるためである。 ホンモロコが琵琶湖の沖合の水深五メートル附近にいて、産卵期に岸に寄ってくるのに対して、タモロコは内湖(琵琶湖と繋がっている小さな湖)や河川にいる。 タモロコは琵琶湖に流れ込む水路などで簡単に採取できるが、ホンモロコは産卵期以外、浅場ではとれない。 またタモロコは自然分布的には静岡・新潟県以西に生息する。移入されたものだが関東にもいる。また、朝鮮半島などにもホンモロコよりもタモロコに近い種がいる。 ちなみに、それほど似ていない「もろこ」にスゴモロコ、デメモロコ、イトモロコがいる。この細長い小魚たちは、今はすべてが貴重で値を上げている。 要するに琵琶湖ではタモロコ、ホンモロコの両種がとれるが漁業的な価値ではホンモロコの方が高い、それでこその「本」なのだ。 琵琶湖固有種なので呼び名は少なく、湖周辺で聞くと、単に「もろこ」と呼ぶ人の方が多い。 漢字で書くと諸子で、琵琶湖の魚屋さんなのでは「もろもろのこがもろこになった」と言う。「諸」はたくさんという意味で、魚類に使うときは小さいという意味合いも持つ。「こ」は魚名語尾なので「たくさんいる小さな魚」という意味になる。「もろこ」はこの小さくてたくさんとれる魚の総称なのだ。 また琵琶湖では「柳諸子」という呼び名がある。タモロコと比べてほっそりしていて柳の葉のようだからだ。 今や琵琶湖でも天然ものは貴重である。これなど明らかにブラックバスやブルーギルなどの海外からの移入種と、湖岸周辺の埋め立て(宅地開発)などによる。 個人的な意見ではあるが、生物の生きたままでの輸入、移入は全面的に禁止すべきである。関東の多摩川、霞ヶ浦、琵琶湖と移入種だらけ、固有種は年々減少している。 ついでにもうそろそろ土地開発は全面的に禁止すべきだ。当たり前だが護岸工事、ダム建設などをやめて、もっと人類以外の事も考えるべし。 ホンモロコの産地は基本的に琵琶湖周辺である。ただ近年、養殖が盛んに行われていて、関東でもときどき売られている。 あらかじめ述べておくが関東の養殖物も非常においしいし、上物だとは思う。ただ、関東のものもホンモロコなのか? と言われると疑問符が浮かぶ。 タモロコとホンモロコの違いはほとんどない。ホンモロコの方がややスマートで全身が銀白色をしている。タモロコは細長いがホンモロコと比べると体高があり、体側に暗色の帯が出ることが多い。またどちらかというと、タモロコの方が沈んだ色合いをしている。 関東では休耕田などで養殖が行われているが、養魚場の水深が浅いのではないか。本来、ホンモロコは琵琶湖の沖合、水深五メートルくらいから、ときに表層にいる魚である。それを浅場で養殖すると、遺伝子的にはホンモロコでも、徐々に浅場にいるタモロコに形態が近づくのかも知れない。 旬は「魞挿(えりさす)」十二月から三月いっぱいまでだろう。徐々に真子(卵巣)が膨らみ始めてくるのにも季節を感じる。 年に数回、琵琶湖と京都に行く。冬から春にかけての旅で必ず買うのがホンモロコである。 入手困難というほどの魚ではない。京都中央卸売市場でも魚を買うための知識があれば買えるし、京都には淡水魚を専門に扱う鮮魚店も少なくない。東京でも豊洲市場では売られている。 もしも初めて食べるなら、「焼き諸子」を買うといい。京都市内の川魚店では夏は「焼きワカサギ」、寒くなると「焼き諸子」を作って店頭で売っている。 子持ち加減(卵巣の膨らみ加減)を見て、「春ですね」などと話が弾むのも魅力のひとつである。 これを自宅で軽く焼き直して、しょうが醤油で食べるのがいちばん手っ取り早い。 焼くという調理法なら、海水魚よりも淡水魚の方が上だと思っている。例えば「アジの塩焼き(マアジ)」がいかにうまかろうが、ホンモロコには到底太刀打ちできない。 もちろん鮮魚や活魚を手に入れるに越したことはない。 炭火を起こし、素焼きにして、焼けるそばから食うのがいちばんうまい。 これをやっていると酒の肴に焼いているのに、酒を飲むことを忘れてしまいそうになる。 もちろん天ぷらにしても、煮てもいいし、琵琶湖周辺で作られている佃煮もうまい。 非常に入手困難であるが「もろこのなれずし」などという珍品もある。「ふなずし」以上に独特の強い匂いがするが、ぜひ一度お試しあれ。 魞挿す頃になり、梅がほころび始めるやホンモロコが食べたくなる。味で食べるだけではなく、季節を食べる魚だ。 ※これは未校正、完成した原稿ではありません。 「ホンモロコの素焼き、うまうまにゃん」

高級魚 100連発 | 藤原昌髙 ふじわら・まさたか

イラスト・にい きよ

藤原昌髙ふじわら・まさたか

徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)生まれ。ウェブサイト『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』主宰。40年にわたり、日本全国で収集した魚貝類の情報をサイトにアップし続けている。『からだにおいしい魚の便利帳』(高橋書店)、『ぼうずコンニャクの全国47都道府県 うますぎゴーゴー!』、『すし図鑑』、『美味しいマイナー魚介図鑑』(ともにマイナビ出版)、『イラスト図解 寿司ネタ1年生』(宝島社)など著書多数。

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